「育業」という愛称で小池都知事が伝えたかった事は何だったのか?

2022年6月29日、東京都が「育休」に変わる愛称として、「育業」を発表しました。

今回は、なぜ「育業」という愛称が必要だったのかを少し掘り下げて考えた上で、「育業」について考察をしていきます。

「育休」の愛称が必要になった理由を一緒に考えよう!

フルタイム共働き & 育休2回取得した娘2人のうめいパパです。

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今回のテーマは 『「育業」という愛称がなぜ必要だったのか』についてです。

同じテーマでスタンドFMでもお話しています!興味がある方はこちらも是非、ご視聴ください。

「育休」という名称を変更せざるを得ない理由

まず、そもそもの発端について整理していきましょう。

「育休」という言葉に愛称をつけざるを得なかった理由は大きく2つだと考えています。

「育休」の名称変更が必要な理由
  • 仕事を"休む”という字を使っていることから後ろめたい雰囲気がある
  • ドイツでは育休の名称を「親時間」に変更したところ効果があった

他にも細かな理由はあると思いますが、大きくはこの2つを理由に東京都の小池都知事は動いたのだと考えています。

仕事を"休む”という字を使っていることから後ろめたい雰囲気がある

育休という名称を変更せざるを得ない理由の1つ目である、"休む"という字を使っていることについて。

ここに対してはネガティブな意見もあったかと思います。

・「育休」という名称のままで問題を感じない

・これにより「後ろめたいこと」と認めてしまった

という意見です。

僕も、「このキャンペーンを通じて、育休取得が"後ろめたい行為"であるということを決定づけてしまったのでは」と思っていました。

ドイツでは育休の名称を「親時間」に変更したところ効果があった

そして、名称変更が成功した前例としてドイツの事例をあげています。

2001年なので20年前の出来事ですが、前例があるというのは愛称募集するにあたり十分な理由になったはずです。

名称変更した結果、どれくらい「育休」ドイツで取得率が上がったのかは調べても出てきませんでした。

「育休」取得率を上げたい対象は"男女"

次に、今回の東京都の狙いについてです。

実は「男性育休の取得率」だけでなく「女性育休の取得率」の向上も目的に掲げています。

男性の育休取得率が低いのは"言わずもがな"です。

当然、今回のキャンペーンで男性育休の取得率向上を目指したいと考えているはずです。

そして、さらなる問題意識として、女性の中に「育休を取得する」という選択肢をそのものを放棄している人もいるとのこと。

現在、全国の育休取得率は女性が81.6%で男性は12.7%。この数字について小池知事は、女性の取得率が高く見えるが取得前に会社を辞めている人も多いとし、愛称の公募によって周りの変化を期待するとしています。

引用元:育休の新愛称を都が公募…どんな愛称がふさわしい? さまざまな意見が|TOKYO MX+(プラス)

確かに僕の職場でも、妊娠と同時に退職する方がいました…

愛称募集以外にやるべきことがあるという意見

SNSでは

「愛称募集、もっとやるべきこともあるし、かけるべきコストもある。」

という趣旨の意見を多く見かけます。

確かに、現在の日本の子育ての制度や、社会の雰囲気について十分であるとは言えません。

ですから、そもそも他にやるべきことがあるという意見は理解できます。

ただ、育休の「愛称変更」も世間に一定のインパクトや、考えるきっかけを与えることができるキャンペーンだと考えます。

実際にテレビでは「育業」に関する特集が組まれたり、SNSでも議論のネタになっていますよね。

特に、制度や法律の変更は、時間をかけていくつもの手続きを経て実行されるものですが、「愛称変更」は法的な手続きが必要ないです。

個人的には「今、できることを最大限やる」という観点では、愛称変更キャンペーンについては評価されるべきだと思いました。

「育業」の「業」とはなにか

ところで、今回のキャンペーンで決まった「育業」の「業」とは何でしょうか。

業について小池都知事は以下のように述べています。

「育児は未来を担う子どもを育てる大切な仕事。“業”という言葉には、仕事という意味のほかに努力して成し遂げる意味もある。苦労も大きいが、その分幸せや喜びも大きいのが育児ではないか。業務にはチームワークが重要。夫婦だけでなく周囲の協力が不可欠。職場の理解もチームワークだ」と述べた上で「胸を張って“育業してきます”と言える社会にしたい」

小池都知事「胸を張って言えるように」 “育休”新愛称は「育業」(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース

このコメントは素晴らしいと思います。

まとめると「業」という言葉に込められた意味はいくつかありそうです。

育業の「業」に込められた意味
  • 育児は大切な仕事=「業」である
  • 「努力して成し遂げる」という意味もある
  • 達成には周囲の協力(職場の理解)が不可欠

前提として、「育休=休み」という印象を打ち消したいという思いがあったため、敢えて「育児は業務である」ということを定義付けたんですね。

その上で、(あなたたちが大切にしている"ビジネス"と同様に)努力なしでは達成し得ず、周囲の協力が不可欠としています。

「育業」という二文字に、多くの意味を見出し的確に伝えるのはまさに「劇場型」ですの戦略ですよね。

愛称募集というプロセスを経たことにより、(出来レースだとしても)民意であるという雰囲気もでますし、かなり上手なプロモーションだったと思います。

「育業」の他の候補はなにか

念の為、他にもどのような候補があがってきていたのかを見てみましょう。

・育児シフト
・育児出向
・育児留学
・子育てワーク
・はぐくミッション
・はぐくみらい期間
・未来育活(みらいくかつ)

「休みじゃない」がポイントなのが伝わってきますね。

【考察】「育業」という言葉で小池都知事が伝えたかった事とは?

ずばり、「育休と仕事(業務)の同列化」だと思います。

というのも、育休取得の阻害要因の一つとして、「仕事絶対主義」な日本人の価値観が挙げられます。

この、価値観を崩して、「仕事」と「育児」をフラットにすることで、育児参加への理解・促進をしたかったのではないでしょうか。

「育業」で伝えたかったことは

「育業」が流行るかは別問題

ただし、今回のキャンペーンは一過性のものになる可能性も十分あると思っています。

これは東京都のパフォーマンスであり、法的拘束力もありません。

うめいパパが考える、浸透が成功するパターンは、上場企業が率先して「育休」の社内呼称を「育業」にしていくという自主的な活動にかかっているのかな。と思います。

今、SDGsの成果を出したい上場企業は積極的にネタ探しをしていますから『「育業」の推進』という名目でアピールをする可能性はあります。

多くの企業が「育業」と呼称しはじめれば、世の中に浸透していくことは考えられるかもしれませんね。

ちなみに、僕は浸透するまでこっ恥ずかしいので「育休」と呼びます。